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苦労した話・・・ベテランから贈る言葉 presents


クマゴロ―先生に聞く



長らくお待たせしました・・・・

第3回 手あたりしだい 教具を作ったんです。

Q:ずいぶんサボってしまってごめんなさい。
A:いえいえ、僕は寛容なんで・・・。
  ・・・でも、昔の話を思い出すのはね・・・・。

Q:ちょっと恥ずかしい?
A:そりゃそうですよ。

Q:でもね、人身御供ですから。
  恥をさらすとおもしろい。
A:残酷なこと言いますね。

Q:でも、若い人たちには参考になりますから・・・
  それに、私も楽しいし・・・。さぼっておいて、こんなこと言うのは図々しい?
A:まあ、いいでしょう。
  今回だって、お手はやわらかにお願いしますよ

Q:さて、本題に行きます。
A:どこからだったかな?

Q:エ~~と、蚕のまゆのお話だったか
A:でも、まだ話したりないところもあったんです。
  まだ、ミニ織り機の話が・・・・

Q:ええ、どうぞどうぞ。
A:そのころ、続けて、地機とミニ織り機の講習会が、会であったんです。
  ディズニーランドはまだできてなくて、
  夜行特急みずほで、品川に朝10時につく列車で来ました。

Q:夜行ですか、熊本からだから、すご〜〜〜い。
A:そうしたら、会のお母さんたち、大竹さんや、針生さんの大サービスで。

Q:私も、たくさんいただきました。
A:大竹さんの漬物、白菜にカツオ節を削りたて、
  それだけじゃなくて、プレゼント!!
  戻ったら、すぐ作れるように、
  ミニ織り機のタテ糸をひっかける小さな部品を、
  余分に作ってくれていて、私、二つ持って帰りました。
  細かい手順も教わったから、これならできると。

Q:百人力ですね。
A:でも、一大決心をしました。ミニ織り機、一人に一個ずつじゃないと意味がない。

Q:まさか、まさか・・・・
A:高校の先生なので、そんなこと、一度もしたことない。
  でも、生徒の分200名分、ミニ織り機を作ってやろうと、
  一大決心でした。

Q:なんで、そんなに・・・
A:それは、授業が成立しないからですよ。とにかく必死!!

Q:それだけでがんばれるんですか?
A:その前は、受験校行っていて、子どもたちは前を向いて、すべてにyes。
  文字と板書が大好きな教員でした。

Q:高校の先生はそれが常識でしょ。
A:でも、こっち向いてくれないんだから、・・・
  しらじらした雰囲気は、二度と体験したくない。
  それで、200名分、ベニヤの板をカッターで切って
  キットを作りました。

Q:カッターで切るのはまめができそうですね。
A:子どもたちには、サンドペーバーで磨かせて
  洋服が真っ白になっても、磨いていましたよ。

Q:いよいよできてきますね、織り機が・・・。
A:接着剤で、部品をくっつけ、
  小さな釘で組み立てました。
  作るまで、6時間かかりました。

Q:いよいよ今度は織りですか?
A:織り始めて、そうしたら、・・・・・みんな無言。
  喧噪の授業ではなく、初めて夢中になった。

Q:夢中になってくれた時の、静けさって、一種独特
  そうしたら、先生、すごく好かれたでしょ。楽しかったって。
A:そうはいきませんよ。
  初めての質問があったんです。
  「どうしてこんなことをするの? 何のために?」って

Q:さすが、高校生。するどい。
  何のためと聞かれると、ドキッとします。
  まともな目的だって、子どもに急に聞かれると
  しどろもどろの言い訳に聞こえないかって・・・そう思ったりして
  ちゃんと答えないといけないとも思うし。
A:それで、自分も、ものつくりは何のためにやってるのかなって、考え出したんです。

Q:それで、?
A:今度は、その一方で、蒸気の模型に行きます。
  それから、会の代表の白井春男さんに、
  いろいろ話しかけられて、
 「ずっと、東京の八王子はシルクロードだった」とか、
  沖縄行ったら沖縄行ったで、
 「沖縄のススキがあるけれど・・・」
  と言われたけど、わかってました、さとうきびだって・・・。
  白井さんは、そんな話すサービスを続けてくれました。

Q:おしゃべりが好きでしたよね、白井さん。とても楽しかった。
  相手に合わせるサービスだから、とても幅広くて、おもしろくって・・・。
A:だから、ものつくりも楽しかったし、白井さんの話すサービスもうれしくって、
  会にずっと参加していました。
  そしたら、次に、蒸気機関。

Q:蒸気機関の模型ですね。何でしたか?工場模型?ミニ自動車?
A:作ったのは、ヘロンの蒸気機関でした。
  
Q:飯嶋さんの製作でしたね。
A:もう、ガスボンベや穴もあけてあって
  台を作るだけになってました。
  これは、高校一年生の教科書「現代社会」の
  イノベーションを伝えられると思って、学校に帰って見せたんです。
  でも、蒸気がたくさんできすぎてしまって、
  閉めていたゴム栓がポーーーンと抜けてしまった。

Q:うわあ、こわいこわい。
  だから、蒸気機関は、私はこわくって、
  とても慎重にやるんですけど、・・・・
A:そしたら、それが、次のクラスに伝わってて、

Q:どうなりましたか?高校生逃げ出した?
A:いやいや、でも机が、一番後ろまで引いてありました。

Q:そりゃあそうでしょうね。ゴム栓が当たらないように。
A:でも、子どもたちは、こわいけど、期待していたんだと思ったんですよ。
  それで、次の年にイギリス製蒸気自動車の模型を通販で
  10万円出して買いました。
  ロールスロイスの形をしていましたよ。

Q:ええっ!!!!なんですか、それ???
A:だから、蒸気機関の模型で、本物が欲しくなってしまって。

Q:趣味ですか?
A:まさか、高校生に見せたかったんですよ。
  有名なマモード社でしたよ。

Q:それも、マモード社!
  有名じゃないですか。蒸気機関の一番早い本物の列車がマモードですものね。
  200キロ出たという伝説の・・・。
A:そうです。さすがにかっこよくて、子どもたちも喜んだ。

Q:そうでしょうね。(この先生、金に糸目をつけないね…大丈夫か?)
A:うん、なんだか、たじろいだら、ダメだっていう意地があって。

Q:それが、どう関係してるのかな?
A:本物を見せないとって思うようになったんです。

Q:さて、蚕の糸はいつ出てくるのでしょう?
A:そうそう、次にその話。
  地元で繭が手に入ったんです。
  
Q:まだ、養蚕をやっていらしたんですね、農家。
A:学校で使うんだって言ったら、ごみ袋にいっぱい、2000個ぐらいくれました。

Q:うわあ、すごい、!!
  我が家では、毎年蚕を飼ってますけど、
  その世話は、ほんとうに大変。教材用ですから、
  せいぜい200匹くらいかな。
  一度、2000匹飼った時は、玄関に繭を作られて、
  娘たちは、悲鳴を上げてました。
A:以前は、物をもらいに行くのは恥ずかしくて嫌だったのに、
  子どもたちが喜ぶ顔が、思い浮かぶから
  どんどんもらってきちゃう。

Q:ずうずうしいと言われようが、
  そりゃあ、子どもたちの笑顔には敗けますよね。
A:そうしたら、桑の栽培は子どもたちの家でもやっていたとわかって来たり・・・
  それで、繭から糸を取ろうと、職員室で煮てみたんです。
  そうしたら、くさいくさい、・・・やめてくれ!!!

Q:そりゃそうですね。
  野麦峠の映画の中でも、皇族のかたが、吐くくらいだから・・・。
A:それで、その続きは警備員室で、
  湯呑みに入れて、糸を取って見たり・・・

Q:警備員さんもいい迷惑だったでしょう。
A:でも、どこかでやらなくちゃならないんだから・・・
  子どもたちとは、紙コップに繭を一個ずつ入れて、
  お玉で、一個一個入れてあげて・・・
  それで、割りばしに巻きつけていきました。

Q:うわあ、気の長い話ですね。
  繭って、何キロも糸の長さあるでしょう?
  割りばしだったら、何時間かかるのかな?
A:そりゃあ、時間制限があるから、50分。
  それでも、夢中になって、ずっとやっている。

Q:それが、単純労働って、意外と子どもたちに好まれますね。
A:でも、次の授業が、英語や数学、国語の先生たちから、
  大ヒンシュクで・・・・

Q:そりゃあ、そうですね
A:でも、僕は、うれしいんですよ。
  夢中になってくれて、勉強してくれるわけだから・・・

Q:さて、次は、どのお話でしょうか?
A:こんどは、アンネの話とかかな?

Q:戦争の話とかですね。とっても楽しみです。
A:しばらく、休憩ですよ。


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人間の歴史の授業を創る会

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