 
  
  
  
          
          Q 長らくお待たせしてしまってごめんなさい。
          A 待ちくたびれましたよ。
          
          Q エ~~と、どこからでしたっけ?
          A 忘れられたんじゃ、困るね、きみきみ。
          Q いろいろと授業が変わっていったという話でした。
            そのきっかけが、またありますか?
          A それが、白井さんから、合宿研究会で会った時、
            「あなたは、始めないから、こりゃあダメだ」と言われた。
          
          Q 何だかひどい言いかたですね。
            私だったら、グサッときて、反発しちゃうかな?
            それはどういう意味だったんですか?
          A 人間の歴史の教材をやらないから・・・
            ものづくりは、やっても、歴史の自主編成に
            チャレンジしないんだね、そりゃあ残念だ・・
            という意味だったんでしょう。
            でも、それが悔しくて悔しくて・・・
            内心、そんな切って捨てるような言い方をされるのか・・・とか、
            僕に、どれだけしてくれたんだとか・・・
          
          Q いやあ、相当、カチンときたんですね。
            研究会の緊張した雰囲気がビンビン伝わります。
            何か言われると、なにくそって思いますね
          A 白井さんは「その人の行動の変化があったところを
            よく覚えているんだ」と言ったんです。
          
          Q それで、先生は?
          A つまり、本気で「人間の歴史をやるのかやらないのか」
            突きつけられたように思いましたね。
          
          Q その悔しさを、どうしてやろうと思った?
          A ちょうどその時、人類の人口の変化を表わしたグラフを
            研究会で見ました。
            かなり長くて大きくて、
            農業の発明と産業革命が、人口を爆発的に増やしたとわかった。
            これなら、年表より簡単に思えましたよ。
          
          Q ダイナミックに歴史をやろうと・・・・
          A そうそう、そして「歴史の時代の変化が大事なんだ!!」とわかったわけ。
          
          Q 学校に帰ってからは?
          A 学校の方では、前から子どもたちから言われていたことがあった。
          
          Q なんですか?
          A だんだん教科書から離れていくわけです。
            歴史の時間は、地球の歴史から始まる。
          
          Q 私たちの人間の歴史では、そうですよね。
            神様ではなく、地球が人類を生み出したとして・・・ね。
          A ところが、「なんで恐竜から始まるの?」
            「なんで地球の歴史から始まるの?」と聞かれる。
          
          Q それはそうでしょうね。
            どうやって先生は答えるんですか?
          A 私も困ってしまって・・・。
            だから、そういう質問を予想して、
            準備するようになったんです。
          
          Q ええっ?何を準備するんですか?
          A 先ずスタートは教科書選びですよ。
          
          Q ふむふむ、どういうことですか?
          A 高校は、自校で選びますから、現代社会の教科書を
            自然環境から始まる教科書を選んでおく。
          
          Q ああそうすればいいんですね。
          A それから、たくさんいろいろ用意しました。
            ビデオプロジェクター  60万円しましたよ。
          
          Q ええっ!!60万円自腹で?
            今のプロジェクターの最初ですよね
            60万円もしたんですか・・・ちょっと絶句ですよ。
          A それだけじゃなくて、教材集めもしたし
            アッテンボローの「生き物たちの地球」のシリーズも
            全部録画をして集めた。
            教具もずいぶん集めました。
          
          Q いっぺんにすごいですね。
            その情熱、火がつきそうだ。
          A 織り機、紡錘車、糸車、ジェニー紡績機の模型
            ヘロンの蒸気機関模型 地機 力織機
            高機、蒸気自動車 蒸気船・・・・
          
          Q 先生、私たちの博物館なみでしたね
          A それだけじゃありません。
            教具もずいぶん集まって来たけど、
            また、新しい見通しができる材料があった。
          
          Q それは何ですか?
          A それはね、久津見さんの本「人間ってすごいね、先生」
            と、白井さんが作ってくれたプリントでした。
          
          Q それはどんな意味があったんですか。
          A 久津見さんの本は小学校六年生の実践だけど
            地球の歴史からベトナム戦争までの通しの授業だったから
            全体像が見えました。
          
          Q 小学校の授業でも、高校で役立つわけですか
          A そうそう、授業計画を見たわけ
          
          Q なんだ、おもしろい所じゃなくて、計画だったところが、
            超真面目!!!ですね
          A いやいや、年間の計画を立てるには、
            それが必要なんですよ。
          
          Q そう言われるとそうかもしれない。
            どれだけ時間がかかるのか、
            何を内容として良いのか
            適当にやればいいってもんじゃないですね
          A 人間の歴史をやるなら、
            適当にはやれない、・・・・
            文部省の言うとおりにやっているわけじゃないから、
            授業がつまらなくても、人のせいにはできない。
            だから、必死になって計画を自分でも考えた・・・ということかな
            
          Q 白井さんのプリントは?
          A B4の年表もあるし、読み物もあった。
          
          Q 読み物って言っても、時代ごとの文章でまとめたものでしょう?
          A いやいや、違いますよ。
            20ページぐらいあって、コンパクトにまとめたものです。
          
          Q ああ、そうですね
          A その最後のページにこう書いてあったでしょ。
            「私たちの力は小さくとも、小さな力を集めれば、
             それは無視することができない・・・」と書いてありました
          
          Q それって歴史を勉強する意味ってことですね。
          A そうですね。そう思うことが生きている意味ってことでしょう?
          
          Q ずいぶんなんだか、本気になってきましたね
          A ええ、学校が変わって次の学校に移ったら、
            全部が楽しくなっていった。
          
          Q いやあ、脂がのって来たんですね
          A それはおかしいね。そうじゃなくて、
            ノート交換を始めたんですよ。
          
          Q 交換日記ですか?仲良しになるため?
          A そんな不純なもんじゃないですよ。
            そのきっかけはね
            どうでもいい授業じゃないから、・・・・失礼!
            やりたくてやっている授業だから
            教室のみんながどう考えているか、知りたかった。
          
          Q そりゃあ、知りたくなりますね。
            力を入れて授業しているわけだから、
            どんなふうに、例えば面白いのかおもしろくなかったのかとか
          A それだけじゃないんです。
            いやらしいことを言えば、
            たとえば、インカのジャガイモ栽培を見せると
            正直に高校生は書くわけです。
            「毎日ジャガイモばっかり食べて、
             他に食べる物が無いのか」って書く。
            だから、赤ペンで
            「日本人は、何でお米ばかり食べているんだろう・・・
             これとおんなじじゃあないかな」って返事する。
            
          Q そうか、そう返事をして、・・・
            つまり、農業の文化を伝えるっていうことですね。
          A そう、何とかして、そこに生きている人たちの
            誇りを伝えたい。・・・・
          
          Q かっこいいですね。
          A そうやって、ノートに、ひとこと書くわけですが、・・・
            こっちが気を抜いて簡単に書くと、子どもたちも簡単に返事を書く。
          
          Q そりゃそうですが・・・
          A だから、手を抜けないし、・・・
            次の日には必ず渡すようにしていたので、
            子どもたちが、授業の一番初めに
            ノートを返すと、パッと見る・・・・
          
          Q わかります、わかります
            必ず、どんな子でも、何を書いてくれたかと期待してますよね
          A それなのに、見て、ぽいと、机の上に置く子がいる。
            すると、ああ、ダメだったなあと思って、
            次の日は、もっと書こうと思ったものです。
          
          Q いやあ、重労働じゃないですか
          A そりゃそうですよ
          
          Q 毎日だいたいどのくらいの人数見ていたんですか
          A えーと、だいたい毎日平均すると
            80人くらいかなあ
          
          Q いやあ、大変大変
          A それも、高校生だって、自分のノートに何が書いてあるか
            お互いに見せあうでしょ。
            それで、同じことが書いてあると、
            なあんだ・・・と言って、
            ノートをパッと閉じるんです。
          
          Q そりゃあ、ちょっとショックだけど、・・・
          A 高校だったら、そんなにノートを見て
            何か書くなんていうことは、私自身も
            全然やったことがなかったわけ
          
          Q そういえば、私だって、高校で
            先生にノートを見せたなんて言うことは
            なかったかも
          A だから、ノートをパッと閉じられると
            ショックだし、また、がんばらないとと思ったんです。
          
          Q でも、疲れるばっかりだったらやらないけど
            いいことがあったんですね。
            「人間の歴史」をやって、感想をノートに書いてもらうと
             うれしいこともあったんでしょう?
          A そうそう
            「人間って変わらない、時代が変わっても・・・」とか
            「被支配者と支配者の関係、
             される側とする側は、今も続いているんだなあ」とか、書いてくれた。
          
          Q それは、なんだかすごい。
            どんな授業の時ですか
          A 山椒大夫の話で、姉・弟が売られていく話を
            単純に、かわいそうだというだけじゃなくて、
            その前の奈良時代の社会と共通して見てくれていたのか・・・
            とうれしくなったわけ。
            
          Q 高校生だからいろいろ書いてくれますよね。
          A それを読んでいると、
            僕の授業で、世の中が見えて、
            役に立ったんだなあとホッとして、少しは伝わったのかなあ
            と気持ちが楽になりました。
          
          Q 授業のしがいが出てきたということかな
            高校生だから、当然と言えばそうですが、
            やっぱり社会を見ているんですね。
          A でもね、すべてが平和じゃないんです。
          
          Q 苦労もあるね
          A 意外にまじめな子が、斜めに見ている。
            批判的に見ている子がいて、冷たい視線を感じもします。
          
          Q そういう子たちはどうするんですか
          A 直接言いに来ることが多いんですよ。
          
          Q なんていうんですか。
          A 授業にはついてくるけれど、
            この授業がどんな役に立つのかな
            とか、いつもビデオばっかりとか・・・
            時には、洗脳しているんですかと聞かれたこともあって・・・
          
          Q さすが高校生、びっくりするし、
            おかしいです。ふふふ
          A 私もビックリ!!
            でも、ああ、そうね〜〜と、受け流して・・・
          
          Q いろんな高校生がいますね。思春期だし・・・
          A そうそう、また思い出しちゃったけど、
            テレビの小さい画面だと、下向いちゃって
            見ない子がいるんですよね。
          
          Q ああ、それはいるかも。
          A メガネもかけない、近視なのに・・・。
          
          Q います、そういう子。ちょっとしゃくにさわるね。
          A だから、プロジェクタ-を自腹で買って
            100インチにして、いやでも見えるようにした。
            60万円したけど。
          
          Q すごい過激!!見ないなら見せてやろう。
            「鳴かぬなら,鳴かせてみせよう、ホトトギス」ですね。
            でも、それに60万かける意地っ張りがすごい。
          A 5年月賦でした。
          
          Q よく覚えていること、覚えていること
            奥さんに怒られませんでしたか。
          A いや、いや、それは、学校に置いておいたから、
            ばれませんでしたよ。
            それに月賦だから一か月1万五千円くらい・・・
            小遣いの範囲だから
          
          Q 小遣いの範囲だからって・・・
            そんな秘密バラしちゃっていいんですか?
            ・・・と言っても、もう時効かな?
            それに、下向いている子を前に向かせたいから60万って
            やっぱりそれは、先生、過激派ですよ。
          A やっぱり見せたいんだね、見せたくて選んだビデオだから・・・
            それだけじゃなくて、絶対見てほしいから、教室を真っ暗にする。
            電気を消しちゃったんです。
          
          Q 真っ暗じゃないですか。
            いや、私の教える中学生は真っ暗にすると寝ちゃうから
            私は絶対真っ暗にしないで、一つでも蛍光灯つけときます。
            そこは、駆け引きだな。
            私も、中学生の顔色見ながら、そうやって電気をつけたり消したり・・・
            おんなじことやってますね先生!!
          A そりゃ、考えますよね
            ノートに、ひとこと書いてほしいんだし、
            書いてもらうには、まず、ビデオを見てもらわなくちゃいけないし・・・
            それで、下向いて、何にも見てくれないんじゃ・・・・
          
          Q あれ〜〜なんだか同じような光景、以前にも聞かなかったかな?
            ああ、そうそう、カーテン事件でしたね。
            授業ボイコットだ!!
            それにちょっと近い感じかな?
          A いやあ、そんなに大げさには、相手は考えてなかったと思うけど、
            他の子たちは、ちゃんとノートを出して、
            見ると、書いてあるから、
            ずっと彼が気になるわけです。
          
          Q 毎回、下向いてるんだったら、気になりますね
          A 今まで、教科書だけで教えていた時には、前を向いて・・・と言っておれば、
            あとは、下を向いていようが、私のせいではない、って思ってた。
            本人が、そうしてるんだから・・・って。
            ・・・ですんでいたんだけど、・・・
          
          Q ああ、そうか、明らかに、人間の歴史をやるようになったら、
            下を向いてるのは、先生のせい・・・
          A そうそう、僕のせい、
            授業がおもしろくないからだと思ってしまう。
          
          Q なんだか、おもしろい心理ですね
            自分でやりたいと思う授業をやると、怒鳴れなくなるっていう話?
          A うん、うん、考え方が変わるんだろうね。
          
          Q それで、下を向いている子を前にして、
            そっちがそうなら、こっちはこう出てやるぞって、
            100インチを買っちゃうわけだ・・・
            嫌でも画面を見えるように・・・ですね。
            うんうん、やっぱり過激派だね。
          A なんと失礼な、僕は、過激派じゃないですよ。
          
          Q まあまあ、それはそんな意味じゃ、・・・
            でも、高校生は突然100インチが出現したら、
            びっくりして、唖然としてたでしょうね。
            高校生だと、頭をこう持って、前を向かせるなんて、
            絶対できないものね
          A そんなのは、絶対無理。
            体にさわられるのは、一番嫌い。
            なんだか子ども扱いされたと思うんでしょう。
            自尊心を傷つけられたってね。。
            それも言うことを聞かせるため頭を向けるって、無理!!
            だから、100インチだね、やっぱり意地だね。
          
          Q 100インチの映像で?
          A それから、もう一つ、学校がちゃんと
            音響機器も買ってくれたんです。
          
          Q プロジェクターだけじゃ音がねえ、小さいから?
          A そう、BOSEのスピーカー。
          
          Q すごいですね、学校とは思えない。映画館のようだ。
          A そうやって、私ががんばってるのを見て、
            まわりの先生たちも支えてくれたんです。
          
          Q それは、うれしかったでしょう?
          A それはもう、うれしいですよ。
            子どもの話もたくさんするようになったし・・・
          
          Q それから、授業はどこへ行ったんですか。
          A あと、アウシュビッツの映画「夜と霧」
            これを見せるのが大変だった。
            最初はいきなり見せたんです。
          
          Q でも、高校生だから大丈夫じゃないですか?
          A いやいや、「夜も眠れない」とか
            ぼくの授業を突き放す子も出てきた
          
          Q そりゃあ、ちょっとわかるかも、・・・。
            100インチの大画面で、アウシュビッツの人々のようすを見たら
            衝撃映像ですね、迫力がありすぎる。
            せっかく平和を訴えたかったのに、それ以前に
            ついて来れなくなっちゃったんですね
          A 今までは、近寄ってきて、くっついてた子に
            なんであんなの見せたの?
            と、言われてしまった。
          
          Q そこまで言われると、逆でしたね
            でも、むずかしいなあ
            見せなければいいとは思えないですね。
            高校生だからこそ、戦争のほんとの姿を知ってほしい気がしますね、先生。
          A 自分の手立てが悪いせいだ・・・と思ったわけ。
            不愉快な目にあったとか、苦しくなった・・・とか・・・
            
          Q 高校生だからこそ、感受性が強いのかもしれないですね
          A ”伝わったけど、子どもとの関係がこわれた”というのでは困る・・・
            実際には、ノートに返事で
            「その通りだと思います」・・・としか書けなかった。
          
          Q そうですね。遺体を無理やり見せることはできない
            ・・ていうことはそうだし。
          A これは、まじめな話ですが、
            一番いけなかったのは、「夜と霧」にたよりすぎたことだと
            今になっては思うわけですけど・・・。
            まず、広島の平和研究所に手紙を出して、
            アンネの日記の写真集を送ってもらった。。
             
          Q それは、また、・・・・すぐに実行ですね。
            普通だったらやらないけど、
          A いやあ、エンジンが、もうすでにかかっていたんでしょうね
            授業しながら、子どもたちから、いろいろノートに書かれると
            その言われたことを、どんどん解決していった感じかな?
            そうしたら、「想い出のアンネフランク」という
            ミープさんが書いた本でした。
            助けた側のミープさんから見たアンネフランクの本で
            写真パネルを50枚見せましたよ。
          
          Q 私も、アンネフランクについて、最近知ったことがあって、
            やっぱりかくまった側もすごいですね。
            ミープさんは、ほんとうに優しい。
            アンネが好きだったんですね。
          A そう、それから、
            見せた子どもたちの中に、ホラー好きだった子もいて、
            フセインの公開処刑の写真まで持って来ちゃう子がいたので、
            これには参りました。
            もし見せて、夜も眠れない・・・なんて困る。
            だから、十分話をしていきました。
          
          Q みんな知ってましたか?アンネのこと
          A いえ、
            だから、最初からナチスというものはどういうものか
            「ホロコースト」のドラマを見せたんです。
            全部。
          
          Q また、これこそ過激な!!
            あれは、アメリカのドラマでしたっけ?
            だってドラマだから、10話以上あったでしょうね。
          A シリーズものだったから・・・ちょっと長かったかな
            でもね、見せたあと、言ってました。
            ドイツ軍の将校が、ユダヤ人たちを人殺しすることに悩む場面で、
            「何で、悩むのか、そこは、人殺しをしないって言ってがんばるべきだ」って。
            それに、アウシュビッツに送られるっていうことは、殺されるっていうことなのに
            「移送って言って、言葉でごまかしてる」って。
          
          Q さすが、高校生、鋭い!!
          A ナチスがどういうものかを、わかっていくわけ
            
          Q そしてから、アンネですね。
          A アンネの日記は、心と体の話でしょ
          
          Q 私も、中学生ぐらいの時に読んで、
            かわいそうな話だけじゃなく、ペーターと
            どうなるのかって、その方が気になって、ドキドキして読んだ。
          A そうそう、
            30分ずつ5回に分けて見せました。
          
          Q 少しずつ、ゆっくり見せていったんですね。
          A 1コマ目には、例えば、今日の質問として、プリントには質問を三つ。
            @アムステルダムは、どこ?・・・・とか、
            A三階に荷物をあげるために、アムステルダムの建物では入口が
             狭すぎて入りません。
             どうしたでしょう、とか・・・
          
          Q 答えは、窓から入れるですね。
            フフフ、答えは、こないだテレビで見ました。
          A そうそう、窓です。
          
          Q アンネの日記を高校生は、どう思って見てたのかな?
          A やっぱり、ペーターとキスをするのかしないのかって、
            ずっと見てますね
          
          Q 先生が見せたのは、白黒の映画でしょ。
          A そうですよ。
          
          Q カラーでもそのあとできてるんですけれど、
            白黒の映画は、アンネが、かわいいですよね。
            目がステキ。
          A 愛くるしいですね。
            それから、意外に猫がいいんです。
          
          Q あ、猫が出てくる。
          A ドイツ兵が家の中を歩いて、
            誰か住んでるんじゃないか?って疑う時に
            猫が出てきて、ああ、猫のせいかって・・・
          
          Q 動物は好きですよね、子どもたち。
            画面に出てくるだけで惹きつけられるのは、その通りですね。
          A そうして、何度も危ない場面があって、・・・
            それが、あの映画では、画面が、最後、プッツリと切れてしまう。
            連行される場面で終わり。
          
          Q あ、そこで終わってしまうんですね。
          A そう、だから子どもたちは、あのあとどうなったの?って聞きます。
            そして、「夜と霧」でつなぐわけ。
          
          Q ああ、そうして、最後のほんとうの悲惨なようすが
            わかるわけなんですね。
            やっぱり、すごく残酷。
          A そう、子どもたちは、絶句。
          
          Q ああ、絶句!!
            それは、そうだなあ。
            アンネを見守っていたわけだから、
            もうアンネは友人ぐらいの気持ちになっていたんですね。
          A それが、アウシュビッツですから。
            そして、ナチスと日本も同じようなことをしたんだとか、
            アジアに侵略したんだとか・・・そういうことを勉強すると・・・
          
          Q 高校生にとっては、ショックでしょうけれど、
            でも、真実を知りたがる時期だから、
            それは、きっと受けとめてくれたでしょうね。
          A ああ、こう言いましたよ。
            人間をぺらぺらにしてしまうんだね。
          
          Q やっと、心に届きましたね
          A いやあ、ちょっと照れますね。
            そうね、心の深い所で共感してくれたってわかると、
            すごく、こっちも幸せになります。
          
          Q いやあ、戦争の授業で、わかってくれたなって、
            そこが通じるとうれしい、・・それはよくわかりますね。
          A そうでしょう? 社会科教員として、教師冥利に尽きますよ。
          
          Q だから、アイラブ授業ですね。
            ちょっとこれって、照れくさい言いかたじゃないですか?
          A いやいや、ほんとにアイラブ授業なんですよ
            そう思うでしょ?
                        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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