Q:ずいぶんサボってしまってごめんなさい。
A:いえいえ、僕は寛容なんで・・・。
・・・でも、昔の話を思い出すのはね・・・・。
Q:ちょっと恥ずかしい?
A:そりゃそうですよ。
Q:でもね、人身御供ですから。
恥をさらすとおもしろい。
A:残酷なこと言いますね。
Q:でも、若い人たちには参考になりますから・・・
それに、私も楽しいし・・・。さぼっておいて、こんなこと言うのは図々しい?
A:まあ、いいでしょう。
今回だって、お手はやわらかにお願いしますよ
Q:さて、本題に行きます。
A:どこからだったかな?
Q:エ~~と、蚕のまゆのお話だったか
A:でも、まだ話したりないところもあったんです。
まだ、ミニ織り機の話が・・・・
Q:ええ、どうぞどうぞ。
A:そのころ、続けて、地機とミニ織り機の講習会が、会であったんです。
ディズニーランドはまだできてなくて、
夜行特急みずほで、品川に朝10時につく列車で来ました。
Q:夜行ですか、熊本からだから、すご〜〜〜い。
A:そうしたら、会のお母さんたち、大竹さんや、針生さんの大サービスで。
Q:私も、たくさんいただきました。
A:大竹さんの漬物、白菜にカツオ節を削りたて、
それだけじゃなくて、プレゼント!!
戻ったら、すぐ作れるように、
ミニ織り機のタテ糸をひっかける小さな部品を、
余分に作ってくれていて、私、二つ持って帰りました。
細かい手順も教わったから、これならできると。
Q:百人力ですね。
A:でも、一大決心をしました。ミニ織り機、一人に一個ずつじゃないと意味がない。
Q:まさか、まさか・・・・
A:高校の先生なので、そんなこと、一度もしたことない。
でも、生徒の分200名分、ミニ織り機を作ってやろうと、
一大決心でした。
Q:なんで、そんなに・・・
A:それは、授業が成立しないからですよ。とにかく必死!!
Q:それだけでがんばれるんですか?
A:その前は、受験校行っていて、子どもたちは前を向いて、すべてにyes。
文字と板書が大好きな教員でした。
Q:高校の先生はそれが常識でしょ。
A:でも、こっち向いてくれないんだから、・・・
しらじらした雰囲気は、二度と体験したくない。
それで、200名分、ベニヤの板をカッターで切って
キットを作りました。
Q:カッターで切るのはまめができそうですね。
A:子どもたちには、サンドペーバーで磨かせて
洋服が真っ白になっても、磨いていましたよ。
Q:いよいよできてきますね、織り機が・・・。
A:接着剤で、部品をくっつけ、
小さな釘で組み立てました。
作るまで、6時間かかりました。
Q:いよいよ今度は織りですか?
A:織り始めて、そうしたら、・・・・・みんな無言。
喧噪の授業ではなく、初めて夢中になった。
Q:夢中になってくれた時の、静けさって、一種独特
そうしたら、先生、すごく好かれたでしょ。楽しかったって。
A:そうはいきませんよ。
初めての質問があったんです。
「どうしてこんなことをするの? 何のために?」って
Q:さすが、高校生。するどい。
何のためと聞かれると、ドキッとします。
まともな目的だって、子どもに急に聞かれると
しどろもどろの言い訳に聞こえないかって・・・そう思ったりして
ちゃんと答えないといけないとも思うし。
A:それで、自分も、ものつくりは何のためにやってるのかなって、考え出したんです。
Q:それで、?
A:今度は、その一方で、蒸気の模型に行きます。
それから、会の代表の白井春男さんに、
いろいろ話しかけられて、
「ずっと、東京の八王子はシルクロードだった」とか、
沖縄行ったら沖縄行ったで、
「沖縄のススキがあるけれど・・・」
と言われたけど、わかってました、さとうきびだって・・・。
白井さんは、そんな話すサービスを続けてくれました。
Q:おしゃべりが好きでしたよね、白井さん。とても楽しかった。
相手に合わせるサービスだから、とても幅広くて、おもしろくって・・・。
A:だから、ものつくりも楽しかったし、白井さんの話すサービスもうれしくって、
会にずっと参加していました。
そしたら、次に、蒸気機関。
Q:蒸気機関の模型ですね。何でしたか?工場模型?ミニ自動車?
A:作ったのは、ヘロンの蒸気機関でした。
Q:飯嶋さんの製作でしたね。
A:もう、ガスボンベや穴もあけてあって
台を作るだけになってました。
これは、高校一年生の教科書「現代社会」の
イノベーションを伝えられると思って、学校に帰って見せたんです。
でも、蒸気がたくさんできすぎてしまって、
閉めていたゴム栓がポーーーンと抜けてしまった。
Q:うわあ、こわいこわい。
だから、蒸気機関は、私はこわくって、
とても慎重にやるんですけど、・・・・
A:そしたら、それが、次のクラスに伝わってて、
Q:どうなりましたか?高校生逃げ出した?
A:いやいや、でも机が、一番後ろまで引いてありました。
Q:そりゃあそうでしょうね。ゴム栓が当たらないように。
A:でも、子どもたちは、こわいけど、期待していたんだと思ったんですよ。
それで、次の年にイギリス製蒸気自動車の模型を通販で
10万円出して買いました。
ロールスロイスの形をしていましたよ。
Q:ええっ!!!!なんですか、それ???
A:だから、蒸気機関の模型で、本物が欲しくなってしまって。
Q:趣味ですか?
A:まさか、高校生に見せたかったんですよ。
有名なマモード社でしたよ。
Q:それも、マモード社!
有名じゃないですか。蒸気機関の一番早い本物の列車がマモードですものね。
200キロ出たという伝説の・・・。
A:そうです。さすがにかっこよくて、子どもたちも喜んだ。
Q:そうでしょうね。(この先生、金に糸目をつけないね…大丈夫か?)
A:うん、なんだか、たじろいだら、ダメだっていう意地があって。
Q:それが、どう関係してるのかな?
A:本物を見せないとって思うようになったんです。
Q:さて、蚕の糸はいつ出てくるのでしょう?
A:そうそう、次にその話。
地元で繭が手に入ったんです。
Q:まだ、養蚕をやっていらしたんですね、農家。
A:学校で使うんだって言ったら、ごみ袋にいっぱい、2000個ぐらいくれました。
Q:うわあ、すごい、!!
我が家では、毎年蚕を飼ってますけど、
その世話は、ほんとうに大変。教材用ですから、
せいぜい200匹くらいかな。
一度、2000匹飼った時は、玄関に繭を作られて、
娘たちは、悲鳴を上げてました。
A:以前は、物をもらいに行くのは恥ずかしくて嫌だったのに、
子どもたちが喜ぶ顔が、思い浮かぶから
どんどんもらってきちゃう。
Q:ずうずうしいと言われようが、
そりゃあ、子どもたちの笑顔には敗けますよね。
A:そうしたら、桑の栽培は子どもたちの家でもやっていたとわかって来たり・・・
それで、繭から糸を取ろうと、職員室で煮てみたんです。
そうしたら、くさいくさい、・・・やめてくれ!!!
Q:そりゃそうですね。
野麦峠の映画の中でも、皇族のかたが、吐くくらいだから・・・。
A:それで、その続きは警備員室で、
湯呑みに入れて、糸を取って見たり・・・
Q:警備員さんもいい迷惑だったでしょう。
A:でも、どこかでやらなくちゃならないんだから・・・
子どもたちとは、紙コップに繭を一個ずつ入れて、
お玉で、一個一個入れてあげて・・・
それで、割りばしに巻きつけていきました。
Q:うわあ、気の長い話ですね。
繭って、何キロも糸の長さあるでしょう?
割りばしだったら、何時間かかるのかな?
A:そりゃあ、時間制限があるから、50分。
それでも、夢中になって、ずっとやっている。
Q:それが、単純労働って、意外と子どもたちに好まれますね。
A:でも、次の授業が、英語や数学、国語の先生たちから、
大ヒンシュクで・・・・
Q:そりゃあ、そうですね
A:でも、僕は、うれしいんですよ。
夢中になってくれて、勉強してくれるわけだから・・・
Q:さて、次は、どのお話でしょうか?
A:こんどは、アンネの話とかかな?
Q:戦争の話とかですね。とっても楽しみです。
A:しばらく、休憩ですよ。
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